デザイン

パッシブデザイン + 微気候

パッシブデザインとは、エアコンなどの設備に頼ることなく自然の力を借りて快適な暮らしを実現できる建物の設計手法です。季節の太陽高度や風向などを知り建築地の立地条件も加味して軒の出、窓の配置・大きさ、吹抜けの位置などを決定します。風を通すための部屋の配置もとても重要です。そしてパッシブデザインの重要な要素が断熱性です。冬は日中の日差しをタイルや煉瓦などにためておくことにより暖かさを夜まで保つことができ省エネにつながります。夏も暑くなってしまった家を、窓を開け夜間の涼しい風を通すことにより家を冷まし、朝暑くなる前に窓を閉め涼しさを閉じ込めます。日差しや風通し、排熱などを上手にデザインしても壁や屋根から熱が逃げてしまっては何にもなりません。断熱性能もパッシブデザインに非常に重要な要素のひとつなのです。

私たちが考えるパッシブデザインは建物だけでは終わりません。庭とつながることにより樹木が作りだす微気候も家の中に取り入れます。

一般的な土地の利用の仕方といえば家をできるだけ北側に寄せて南の庭を広く確保するという考え方でした。しかし、少しだけ家の配置を南側に寄せて北側にお庭を作ったらどうでしょう。北側にデッドスペースを残すのではなく、しっかり利用するという考え方を大切にしています。そうすることにより和室や浴室、洗面所窓を北庭に向けて配置することができます。LDKは南側の大きな木陰のウッドデッキに開き、和室は北庭に対して開くことにより家の中を風が通り抜けます。南だけではなく北側にも適切な大きさの窓が必要なのです。そして外との繋がりができたことで暮らしも変わります。家族でデッキで食事をしたり、和室で庭を感じながら読書をしたり。

家と庭のデザインは別々には生まれません。そして庭は建築地の周囲にある景観や環境につなげて考えます。オーガニックスタジオのパッシブデザインとは、建物の形や断熱性能に加え、スダレや緑のカーテン、通風などの暮らしの工夫、そして庭や外環境の緑に繋がることにより完成します。

十分な性能

SE構法 + 断熱(外断熱+充填断熱) + 自然素材

大切な家族が暮らす家ですから十分な性能が必要です。耐震性・耐久性・省エネ性・安全性などは妥協できない性能だと考えます。

耐震性は、もしもの時に大切な家族を守り抜くためにとても重要です。私たちは全棟構造計算を実施するSE構法を標準採用しています。このことにより大開口・大空間と耐震性の両立を実現しています。構造により空間が限定されないので間取りの自由度が高まります。スケルトン(構造)とインフィル(内装・設備)を分けて考えることができます。

耐久性とは、長期間の使用に耐えるということですが、劣化に対してはメンテナンスや更新が容易に行なえる性能も合わせて重要と考えています。建築時に安価な建材を選びがちですがメンテナンスに過大な費用がかかったり、補修が必要な時にメーカーの生産が終了していたりすることも。建築時のコストだけではなく将来のメンテナンスコストも考えて計画しましょう。

省エネ性では、将来を見越した高い断熱性能をお勧めしています。そしてパッシブデザインを取り入れた設計とスダレなど日射のコントロールや風の取り入れのような生活習慣を住む方が実施しやすい工夫を取り入れています。吹抜けは冬寒いと思われていますが断熱をしっかりすることにより、上下階の熱を伝える通路となります。冬は窓からの日射をたくさん取り入れ、下階に伝える役目をします。夏は暑くなった空気を高いところに集め排熱口より排気します。建物の性能をしっかり確保しその上でエアコンなどの省エネ設備を選びましょう。太陽光発電なども同じこと。せっかく発電しても断熱性能が十分でないとエネルギーを垂れ流してしまうことになります。

安全性とは、建物が原因でシックハウス症候群や化学物質過敏症などにならないための配慮です。平成15年の法改正により計画換気や使用建材の制限などが規定されました。これはまだ十分な規制というより最低限の決まりができたと考えるべきでしょう。シロアリを防ぐ防蟻剤も薬物で防ぐ方法とホウ酸で寄せ付けない方法があります。ホウ酸の方が人体に安全です。初回の金額は高価ですが保証期間が長いことと物理的に残っている限り効果は継続する利点があります。残念ながら日本の建材は十分安全とは言えません。出来るだけ自然素材のもの、安全性を確認された物を選びたいですね。

長く暮らす家です。将来を見越して十分な性能を考えましょう。

経年美

「古い家のない町は、思い出の無い人と同じである」日本画の巨匠・東山魁夷の言葉です。古い家がたくさん残っている町はとても魅力的です。京都の町屋の並ぶ街並みやヨーロッパの長い年月を経過してできた街は美しいと感じます。そこに住む人々の思い出はもちろん、その街の歴史や文化も記録し継承するそんな存在だと思います。

ただ年月を長く重ねただけの家では、「古い家」の本当の魅力は生まれません。そこには、時を越えて存在するための価値が必要とされます。私たちは、100年、200年経ってもその家に住む人はもちろん、その街に住む人たちにも愛情を持ってもらえるような、魅力ある家を作っていきたいと思っています。そのためには強度的にも優れ、快適な生活空間を備えている必要があります。そして年月と共に魅力が増すような、そして街並みに溶け込み、それ自体が街並みを作るようなデザインが大切と考えます。

パッシブデザインを取り入れた軒の出、太陽と風を取り入れるための大きな開口部が特徴のデザイン。環境と立地に合わせて出来上がった必然の形。木材や石材、漆喰などの自然素材はもとより落ち着いた独自の味わいを持っていますが時間が経つにつれ、その魅力は増していきます。

庭の植栽もとても重要です。適切な位置に植えられた緑は成長するにつれ街並みと家を調和させてくれます。屋根よりも大きく育った樹木はその街の大きなシンボルになっていくことでしょう。

ガーデンデザイン

雑木と石の庭

家に緑があること、それは家の表情が豊かになることです。

雑木の木々や石などの自然素材で構成された庭は、年月と共に魅力が増していきます。植物の成長と共に、家の表情はより豊かになり、素敵な街並みの一部として馴染んでいきます。手入れは必要になりますが、ブロックやアルミ素材には無い個性が生まれて、芽吹きや紅葉、実りなど四季折々の変化を感じさせてくれます。手入れで庭に出ているとご近所さんやお散歩の人たちと会話が弾みます。植物を通して関係が広がったり深まったり。

そして緑があると、家が暮らしやすくなります。

デッキの傍らの木は木陰をつくり、夏の陽射しを和らげてくれる緑陰樹。常緑の木は、通りからの視線をやんわりと防ぎ、外の世界を緩やかに繋ぐ緩衝材。北側の木は、夏の冷気を取り込んで、冬の冷たい季節風を防いでくれます。緑の力を利用して、局所的に気候を調節すること( = 微気候)で、より快適な生活ができれば、環境にも優しい暮らし方ができるのではないでしょうか。

それともうひとつ、緑があると暮らしが豊かになります。

お庭でトマトを育てる。収穫したブルーベリーでジャムをつくる。野菜や果実を育てることで、食卓に彩りを添え、ガーデニングの楽しみが生まれます。野菜本来の味や、自然の甘み、採れたての美味しさを知ることは新しい発見の連続。子供達が枝から直接果実を採ってそのまま口に運ぶと甘かったりすっぱかったり、そんな経験をさせてあげてください。

旬の美味しさ、収穫の手応え、季節の香り、芽吹きの美しさ、小鳥のさえずり……五感を通して自然を感じることで、豊かな暮らしが見えてきます。

住宅の資産化

私たちの仕事

私たちの仕事は「お客様の要望」に加え「デザイン・十分な性能・経年美・ガーデンデザイン」などをそれぞれ独立して考えるのではなく、この5つの大切なこと全てを満たす家をデザインすることと考えています。そして全てを満たしながら形や家の中の繋がり、庭や街への開き方が自然な家になるようデザインします。昔から生えているように樹木があり、そこに家が建っていることがとても自然に見えるように。

それが街並みに馴染む家であり、街並みを作る家なのだと考えています。築50年、100年と残っている建築は美しく価値があり思い入れがあり愛されているから残されています。残していくにも必要な部分は更新していかねばなりません。エネルギーひとつとっても煮炊きや暖房、給湯は薪から木炭(石炭)、そして、ガス・灯油から電気とかわってきました。キッチンやトイレなどの設備にしてもその時代に合わせて設備を新しくしていけばよいのです。100年間使われ続けている建物はこのような設備の更新が行なわれています。メンテナンスを行ないながら長い間使い続けることができるのです。建物を維持するには労力とコストが掛ります。美しく価値があり愛されていないと残されません。

世界の多くの国では住宅を建てる(購入する)ということは将来への投資であり、換金できる資産として考えています。住みながら資産が溜まっていくのです。日本でも「住宅の資産化」という考え方に少しづつ向かっています。長期優良住宅や中古住宅の評価方法の変更、省エネ法の改正と建物の長寿命化・住宅の資産化に向けて仕組みづくりが進んでいます。国土交通省のサイトにはそのような情報がたくさん載っています。5年後10年後には住宅が資産になるという考え方はもう普通になっているかもしれません。その時に後悔しないよう、住宅に関する様々な考え方や情報をお伝えし最善の選択をしてもらえるよういたします。

将来のことや建築地のこと、お客様の潜在的な希望も含めて汲み取りデザインすることが「私たちの仕事」と考えております。