住まい手インタビュー・T様邸

細長い土地をいかした家族が思い思いに過ごせる家

土間と可動式の壁を活用したフレキシブルな空間

川越市の旧市街、細長い地形に建てられたT邸。玄関を開けるとモルタル土間のゆったりとしたエントランススペース。玄関収納には夫Tさんの野球道具、土間にはマウンテンバイクが置かれています。可動式の壁をあけると琉球畳の敷かれた和室。2階のリビングへと向かう階段と廊下の横にはコの字型に中庭がつくられ、中庭に面した窓から、たっぷりと陽射しがふりそそいでいました。1階には、主寝室と子ども部屋、浴室。2階に、リビングダイニングキッチン、書斎が配置されています。

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人の目を気にせずに居られる明るい空間で、人の目を気にせずにリラックスしたい。2階リビングは、妻、Sさんの希望でした。

入居は2021年8月。暑い盛りでしたが空調を1台つければ、家の中全体がひんやり。冬も、朝起きてすぐ暖房をつけたいと思うことはなく、断熱性能のよさを実感しているそうです。

小学校2年生の息子さんと1歳7カ月になるお嬢さんとの4人暮らし。夫婦ともに忙しく働くおふたりが家づくりを考え始めたのは、息子さんが保育園年中の頃。それまで賃貸のアパートに住んでいましたが、小学校入学前に自宅購入を、と考えてのことでした。

玄関の収納スペースには夫Tさんの野球道具が。賃貸アパートに住んでいた頃は玄関を占領していたそうですが、すっきり収まりました。

住まい手インタビュー・T様邸
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1階の和室は、現在1歳7カ月のお嬢さんのお昼寝や遊びスペースとして活用。「可動式の壁が、寝室として使う際は閉めたり、来客時には開けて広々とした空間にしたりなどフレキシブルに使えて便利ですね」と妻Sさん。

お互いの実家に帰りやすい距離、子どもたちの将来の進学を考えて交通の便のよさなども考えて川越周辺で家を建てることを検討し始めたというおふたり。工務店で家を建てようと決める以前に大手住宅メーカーの住宅展示場にも見学に行ったそうです。

「でも、私が全然惹かれなくて。どのモデルハウスも既視感があるというのかな。わくわくしなかったんですね。それに…、営業の方に『奥様の家事の導線が…』とか言われると、なんで私が家事することが前提になっているの?と思ってしまったり(笑)」と妻のSさん。そこで川越市内にある「家づくり学校」の講座を受講。様々な工務店があることを知り、紹介されたオーガニック・スタジオへ見学に行くことにしました。

「いろいろな作り手の方がいらっしゃるんだなと知り、それぞれのこだわりもとても興味深かったです。営業マンではなく実際に家を作っている方からお話をうかがうことができるのも大きかったですね」(Sさん)

※「家づくり学校」:これから家づくりを始めたい人に向け、家づくりの基本的な知識をレクチャーし、テイストや方向性などのヒアリングをもとに要望に沿った住宅会社を紹介するサービス。住宅情報誌を発行する会社が運営。

土地探しのハードルを下げた変形地の施工例

オーガニック・スタジオがさいたま市に所有していたモデルハウス、また同社代表三牧の自邸兼事務所にも足を運んだ際に、Sさんは住宅展示場の見学では感じることがなかった新鮮な発見があったと言います。

「モデルハウスも空気が心地よくてとても素敵だったのですが、なにより施工例を見てこんな変形地にもこんなお家が建つんだ!と。その発想に驚きました。皆さんの暮らし方や建てる際のエピソードなど、家からそこに住む方たちの生き方が見えてくるのも楽しかったです。私、植物を育てるのも苦手なんですが……、屋上での野菜作りなど住宅地でもこんなことができるんだ、できたら素敵だなあと。これまでの人生でやりたいと思わなかったことを、はじめてやってみたいと思えた。そんなわくわく感がありました」

また、「耐震性」にこだわっていたというSさんはこう続けます。

「東日本大震災、熊本地震と大きな地震が続きましたよね。家を建てるなら地震に強い家にしたいとずっと思っていました。その点でオーガニック・スタジオの採用しているSE構法は、信頼できる。それもオーガニック・スタジオで家を建てようと思った決め手のひとつでした」

土地探しから始めたおふたり。現在の土地を一度見てすぐに購入を決めました。

「オーガニック・スタジオの施工例を見ていたので、土地の条件のハードルはかなり下がっていました。ここも細長い変形地でもあるんですが、三牧さんに一緒に見に行っていただいて、『いいと思いますよ』と言ってもらえたので、それなら行ける!と。どんなプランが出てくるんだろうと、とても楽しみでしたね」

こう話すSさんが、設計プランを見て「そう来たか!」と思ったのは細長い土地のほぼ中央にとられた中庭。中庭にはヤマボウシが植えられて四季を感じることができ、これから庭にどんな花や緑を植えようか、デザインはどうしようか、考えるのが楽しいのだと言います。

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中庭に面して大きく1階にとられた窓からヤマボウシを眺めて

「好き」を集めて家族がストレスなく過ごせるリビングに

2階は、夫のTさんがどうしても欲しかったという書斎に、廊下、リビングが横一列に並び、仕切りはないものの、ゆるやかに独立した空間に。細長い地形をいかしたつくりです。取材に訪れたのは冬の午後、どの空間にいてもやわらかい光が全体に届き、気持ちまで穏やかになります。

「2階に好きなものが集まっていて、家族がそれぞれ別のことをしながらも一緒に過ごせるのが気に入っています。コロナ禍で外出がたやすくできない期間も、この空間のおかげでストレスなく過ごせたので、本当に助かりました」とおふたりは口をそろえます。

その好きなもののひとつが、Sさんが子どもの頃から大切にしている絵本、Tさんの歴史関連の蔵書。リビングから続く廊下の壁に造作した本棚は、大きな絵本もきれいに納まる奥行きをリクエストしました。子どもが生まれてから集めた絵本と一緒に収納できるスペースが欲しいというSさんの夢が叶った空間です。

Tさんの蔵書も、書斎に造作した壁一面の本棚にたっぷりと収まり、家族の存在を感じながらも心を落ち着けて本や仕事、自分と向き合える空間となっています。

家族みんなで集ったり、思い思いの時間を過ごしたり。2階は、キッチンから書斎まで仕切りのない大空間でありながら、ゆるやかに独立したスペースとなっています。

子どもたちもここで絵本を広げながら過ごしていることも多く、「私と子どもたち、二世代のための本棚ですね」とSさん。

洗面室や階段前の収納棚、キッチンには、Tさん、Sさんそれぞれが選んだお気に入りのタイルが貼られてインテリアのアクセントになっています。

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Tさんの希望だった書斎は、2方向に窓がとられ庭を見下ろすことができます。「すごく落ち着きますね。息子もよくここで宿題をしています」とTさん。

家づくりをとおして、生き方にも影響を受けた

2階から階段を上がって川越の街並みと広い空を見渡せる屋上のデッキへ。今後、このデッキをどう活用するか、考えているというTさんは、次のように話してくれました。

「自然の力を借りて快適な住環境をつくるパッシブデザインについてもオーガニック・スタジオと出会って初めて知りました。予算との兼ね合いから、提案していただいたプランの中から絞り込んでいく必要があったのですが、三牧邸で見た屋上庭園はゆずれない!とプランに残してもらいました。それまで、仕事も忙しくて自分の『暮らし』についてこだわりをもっていたわけではなかったんです。でも、家づくりをとおして、こうしたい!やってみたい!と思えることがたくさんできました。ライフスタイルや生き方にすごく大きい影響を受けたように思います」

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屋上のデッキで息子さんとふたり、この日の出来事を話しながら。この場所を今後どう活用していくかが、楽しみのひとつだそうです。

「息子、娘が成長して、中学生や小学校になる頃、この家はどうなっているんだろう。今はまだ想像もつきません。大変なこともあると思いますが、楽しみですね」ときょうだいで遊ぶ様子を見守りながら、TさんとSさんは目を細めます。この家で暮らし始めて1年と半年余り。

「オーガニック・スタジオで、さまざまな施工例を見て感じたわくわくした気持ちは、今も続いている」と言うおふたり。これからこの家で、どんな暮らしの楽しみを見つけていくのでしょう。ご家族と一緒に時を重ねて、どんな変化をしていくのか、この家の成長も楽しみです。

撮影/柏原真己 かしはら・まき

フォトグラファー。東京都出身。写真スタジオアシスタントを経て、2001年よりフォトグラファーとしてフリーランスで活動を開始。90年代半ばに沖縄、八重山諸島を訪れて以来、その魅力に取り憑かれ2003年~2010年まで沖縄に在住。雑誌やCDジャケットを中心に東京や沖縄の様々な媒体を手掛け、2011年より活動拠点を東京に移す。

文/大武美緒子 おおたけ・みおこ

フリー編集者・ライター。さいたま市在住。アウトドア関連の出版社、企業の広報誌や社内報を制作する制作会社勤務を経てフリーに。「身近な自然とつながる」をコンセプトとしたリトルプレス『Letters』編集・発行人。著書に『山の名前っておもしろい』(実業之日本社)、共著に『山歩きレッスンブック』(JTBパブリッシング)がある。